フォルモサ社の汚水未処理が原因の魚の大量死問題
毎月「繊維ニュース」に連載しているコラムで今月はベトナム中部で4月に起きた魚の大量死問題を取り上げてみた。
秋利美記雄のインドシナ見聞録(28)/「製鉄所よりも魚をとる」
2016年7月19日「繊維ニュース」より
事件の概要は上記の記事を読んでいただくとして、ベトナムでも環境問題に人々の関心が向けられるようになっているという点は心に留めておいたほうがいいだろう。
コラムにも書いたように、今回の事件は比較的わかりやすい形で問題の提示がされたので、解決に関しても、まず妥当なところに落ち着き、その結果、大きな混乱は起きていない。
しかし、この結果、中部に投資しているフォルモサという台湾企業に対するベトナム国民の監視の目は厳しくなっている。
6月30日の調査結果およびそれに対する対応策の発表でいったんは片付いたかのように見えたが、7月に入ってからもフォルモサ社のこれまでの動向を振り返る動きはやまず、ベトナム各地で同社の産業廃棄物の不法投棄が指摘されている。対応を間違えると、またデモなどの抗議活動が発生し大きな排斥運動も起こりかねない。
台湾企業では、他にも5月にバリア・ブンタウ省に工場を持つ繊維企業が汚水を排水処理せず垂れ流したことが発覚し、当局より罰金処分を科されている。
環境問題への関心の高まり
この問題に並行して、ベトナムでは食の安全や環境問題への人々の関心が高まりを見せている。
外国企業の投資にも今後厳しい監視の目が及ぶと予想されているが、これはベトナム投資に関心を寄せている日本企業にはむしろ有利な条件となるのではないだろうか?
中国企業や台湾企業はベトナム投資に積極的だが、ベトナム人はあまり快く思っていない。
環境へやさしい技術を蓄積している日本企業のベトナム投資は、ベトナム側からも期待されるものだと思う。